DTPデータ作成 — 作品を「かたち」にして完成させる ということについてお話ししたいと思います。(朝日広告賞応募の記事の6回目)
コンセプトメイキングでアイデアスケッチをし、自分が作ろうとするものの形が見えたら、作品をかたちにして完成させます。
今日 3月26日(土)コンセプトメイキング(アイデアスケッチ)を終える
明日 3月27日(日)からビジュアルを作成したり、データ化していく。
(できるだけ早めに一旦完成させて、ブラッシュアップをするといいと思いますが、時間配分は、作るものにも依ります。最低一日くらいはブラッシュアップに当てるといいと思います。)
来月 4月9日(土)には完成させ、出力センターへデータ入稿
というスケジュールを想定しています。
DTPに関して、あれこれご存知の方は読む必要はありません。ひたすら作って完成させるだけです。
DTPデータ作成の概要
最初に最も注意したいのが「仕上がりサイズに合わせて画像やイラストを用意する」ということです。
そこで最初の作業としてオススメなのは、「イラストレーターで出力用の台紙をつくる」ということです。
イラストレーターというのは、レイアウトソフト、アドビイラストレーターのことです。
インデザインでもできますが、1枚ものの場合は、イラストレーターでレイアウトするのが一般的ですので、ここではイラストレーターで説明します。
DTPの手順としては、
1 原稿(テキスト、画像、イラスト、図版)を準備、作成する
2 レイアウトする
3 入稿用データ作成
ですが、原稿より先に、台紙を準備した方が良いと、個人的には思っています。
というのは、
・画像やイラストのサイズを確認しやすいから。
・作業の全体像を把握できるから。
・入稿用データを作るときに楽だから。
です。
もちろん、台紙を作らなくてもサイズを割り出すことはできます。
せっかくイラストを描いたのに、小さすぎて使い物にならず、描き直さなければならない…などということを避けるため、仕上がりサイズは先に確認しましょう。
● 画像やイラストのサイズに関する概要
- 画像は350ppiで原寸になるように、フォトショップで調整するのが通常ですが、大きなサイズの場合は、A1以内なら200〜300ppiなら大丈夫です。
- イラストは、原寸よりも120%くらい大きめに描くときれいに出ますが、大きなサイズの場合…
こちらのYahooの知恵袋の答えがとても参考になりましたので、リンクをはらせていただきます。>>>スキャナーに収まらない大きいサイズの絵…
わたしの個人的な体験では…B4の画用紙に描いたイラストを、半分ずつ、自宅のA4のスキャナーで600ppiくらいで読み込み、フォトショップでつなぎ合わせて一枚にして使いました。水平になるように回転を使って微調整し、つなぎ目は重なる部分を広めにスキャンし(A3だとぎりぎりすぎて、この重なる部分がとれなくなります)、乗算で透かしながらピッタリ合わせた後、上のレイヤーの切れ目を、ぼかした太めのブラシの消しゴムツールで消すと、自然になじみます。OKだと思ったら、統合します。これを300ppiにすると、B2サイズのイラストになりますので、十分大きくなると思います。200ppiならば、B1になりますので二連版30段でもはみ出します。(注)もちろん、線の太さも3倍になり、荒れることは荒れます。)
ですが、繊細なラインの線画などは、写真のようなものよりも、もっと高解像度でないと、きれいに見えないことがあります。スキャナーの性能にもよりますが、なるべく高解像度でスキャンして、フォトショップ上で必要に応じて解像度を落とすことをオススメします。
「デザインは目でするもの」ということも言われていますが、やはり、自分の目で、クオリティを確認しながらやるのが良いと思います。
自宅にスキャナーがないときだけ、コンビニのコピー機や出力センターなどでスキャンしてもらえば良いのではないかと思います。
「均一でつるんとしたライン」が欲しければ、スキャンした手描きを下絵にしてイラストレーターでトレースがオススメです。 - 大きく描きすぎても、縮小したときに線が細くてかすれてしまうので、注意します。
- 大きく使いたい小さな絵は、必要なサイズになるように高解像度でスキャンして、フォトショップで、画像の再サンプルをせずに、ピクセル数をキープしたまま解像度を下げるようにします。ピクセル数から仕上がりサイズを割り出すと良いでしょう。(もっとも、あまりにも小さいものを大きくするには、画質の面から限度があると思いますので、試しにプリントアウトしてみて、使えるかどうかは、自分の目で確かめてみるようにします。)
- 低解像度のデジタル感のあるテクスチチュアをねらった画像に関しては、通常の解像度は気にせず、「荒れ具合」は目で確認するようにします。
- フォトショップデータは、入稿のときは、最終的にはCMYKにしますが、様々なフィルターなどの効果を使う場合は、RGBにしないと使えないものがありますので、そういう場合は、RGBで作業します。ですが、最初からRGBのままだと、CMYKのときと色が変わってしまうことがあります。一度CMYKにしてからRGBにして作業し、最後に再びCMYKにすると良いと思います。
● レイアウトデータをつくるときは…
レイアウトをするときに、周囲の余白やトンボが邪魔でイメージがわかない人も多いのではないかと思います。
わたしもどちらかというとそういう人です。
こういう場合は、出力用の台紙とは別のイラストレータードキュメントで、レイアウト用の台紙をつくり、レイアウトを全部やって完成させてから出力用の台紙に貼付けると良いと思います。(または、アートボードを一時的に作品サイズにし、トンボのレイヤーを不可視にするのもいいと思います。)
このレイアウトのアートボードは、作品サイズにすると作りやすいと思いますが、作品サイズを間違えなければ、アートボードのサイズはどうでもいいです。
レイアウトをやっていくと、幾つものバリエーションができたりすることもあります。
何案も自分でつくり、検討しようとすることも多いでしょう。
こういう段階では作品の外側の余白やトンボを邪魔に感じてしまいますし、自宅のプリンターで出力して確認するときにも無駄が出てしまいます。
レイアウトの段階では、作品サイズで作業することをオススメします。
また、出力用の台紙は後でつくるのだということだけを覚えておいて、レイアウトが出来上がったあと作成するのでもいいと思います。
レイアウトを完成させるときにキレイなジャストサイズにするのには、「マスク(クリッピングマスク)」を使うと便利です。
● レイアウトのブラッシュアップ
一旦完成させたら、自宅のプリンターなどでプリントアウトしてみます。
原寸でプリントアウトして、壁に貼って、しばらく眺めたりして、気になるところは筆記用具で修正したり描き込んだりしてみます。それを元にデータを修正します。
(A4プリンターなど小さなプリンターでの大きなもののプリントアウトは、タイリングでプリントして、セロテープなどで貼り合わせます)
また、完成させたものはそのままとっておき、「もっと面白くならないか?」と、別のバリエーションを考えてみるのも良い方法です。写真やイラストのトリミングを変えたりするのでも随分印象が変わるものです。
また、コピーもきちんと読み直します。
・キャッチコピーは魅力的か?
・キャッチコピーだけでなく、細かいところまで正確な情報かどうかや誤字脱字なども、再確認します。
クライアントやユーザー目線で見直してみるのもいいと思います。
または、アートディレクター目線も。
「こうした方がいいと思うけど、めんどくさい、手間がかかりそうだ…」というところから抜け出せると良いですね。(つい自分には甘くなってしまいますが)
● マスク(クリッピングマスク)のやり方
- 作品のサイズの長方形を描き、位置を合わせ、全てのアイテムの最前面にします。
- 全てを選択します。
- イラストレーターCS6の場合「オブジェクト」メニューから「クリッピングマスク」から「作成」
全体がきれいにマスクされました。
マスクのショートカットは Macなら、コマンド+7 解除するときは コマンド+オプション+7
(WindowsならコマンドはWindows ロゴキー)
(※マスクは一番上にあるオブジェクトで切り取られて見える機能なので、★や♥や●、アウトライン化した文字など、何にでも使えて便利ですので覚えておくと、デザインのバリエーションにもつながるのでよいと思います。)
出力用の台紙の作り方
下の図は、A2のトンボ付きの台紙にイラストレーターで全15段のレイアウトエリアを作成した例です。
「仕上がり線」は、出力センターに入稿するため、ボードをA2にカットするための「仕上がり線」です。
作品はグレーの部分のサイズです。
作品を仕上がり線で作らないように注意しましょう。
上記の台紙は下記からダウンロードできます。
自分で作った方が勉強になりますが、バージョンが合えば使えますので参考までに。
>>>イラレCSの台紙
>>>イラレCS6の台紙
● ドキュメントのカラーモードをCMYKにする
イラストレータの「ファイル」メニュー→「ドキュメントのカラーモード」▶CMYKカラー
を選択します
● トンボのつけかた
- 仕上がりサイズの長方形を描きます
- 長方形の線の色は「なし」=太さ0mmにします
(これをしないとトンボが不正確になってしまいます) - 長方形を選択した状態で、
イラストレータの「オブジェクト」メニュー→「トリムマークの作成」
コーナートンボとセンタートンボがつきます。
● アートボードのセンターにそろえる
- 作品サイズの長方形を描きます
- 作品サイズの長方形とトンボをすべて選択し、整列で天地左右センターにそろえます
- トンボをすべて選択した状態で、
イラストレータの「オブジェクト」メニュー→「アートボード」→「選択オブジェクトに合わせる」を選択します
アートボードがトンボをセンターに配置した状態で変形されます。
注)この機能はイラストレータCS4からのものです。
アートボードのセンターにオブジェクトを配置するやり方は色々ありますので、センターになっていればやり方はどうでもいいですが、もう一つ、どのバージョンでも使える楽な方法を書いておきます。
- アートボードをトンボより一回り大きくします
- 作品サイズの長方形とトンボをすべて選択し、整列で天地左右センターにそろえてカットします(「編集」メニューから「カット」を選択するか、ショートカットで(MacならコマンドX(エックス)
- Macならコマンド0(ゼロ)で全体表示します(CS6の場合、「表示」メニューから「アートボードを全体表示」)
- ペーストします(「編集」メニューから「ペースト」を選択するか、ショートカットで(MacならコマンドV)
(WindowsならコマンドはWindows ロゴキー)
使用するフォント
今回は、「イラストレーター」を使って、最後に入稿するときにはアウトラインをとって入稿するのを想定しています。
アウトラインをとれるフォントであれば、何を使っても大丈夫です。
(ほとんどのフォントはアウトラインがとれるのではないかと思いますので、デザインに合うことだけ考えれば大丈夫です。)
DTPデータ作成の記事のおわりに
DTPに関しては、書き始めたらキリがありませんが、このくらいにしておきます。
というのは、やはり、作り手の個々の状況によって、やるべきことは色々と変わってくるので、想像だけで説明しきれるものではないからです。(このような記事に手をつけておきながら恐縮ですが、それこそ本が何冊も書けるほどのネタです…すでに色々発行されていますね。)
「どうやって?」というやり方についてはソフトの使い方以前に、「どんな最終的なイメージを目指すか?」に全てかかっているかと思います。
やはりここも「デザインは目でするもの」だということなんですね。
「イメージを思い描いて」それを実現するために、ソフトをいじくりまわしたり、調べたりして、試行錯誤してやっていただければと思います。
以上です。(長たらしい上に、お粗末な説明で申し訳ありませんm( _ _ )m)