グラフィックデザインの仕事で、デザイン案の出し方として、バリエーションをもっと出していくにはどうしましょうか、というお話です。
このブログの以前の記事で、3案出すための方法をお話ししました。
>>>デザイン3案、アイデアを出すための方法
この記事で、まずオススメなアイデア出しの方法として、
・写真を使った案
・イラストを使った案
・平面構成を使った案
の3つを出すと、「違い」を見せやすい、とお話ししました。
それで、この3案を出したとします。
ところが、現場ではありがちなことですが、お客さまは「写真で3案見たい。」などと言い出します。
また、そうでなくても、最初から「写真がいい」というような条件があることもあります。
そこで、今回は、さらにバリエーションを出していく方法についてお話ししたいと思います。
厳密に言うと、「提案」と「バリエーション」は少し違います。
A案
B案
C案
という複数の「提案」がある中、
A案のバリエーション
B案のバリエーション
C案のバリエーション
というように、複数の近しい案をバリエーションとしてとらえ、グループで1つの案として扱うことがあります。
「提案」同士の差よりも、「バリエーション」同士の差の方が小さいと言い換えることもできます。
ですが、人によっては、「もうちょっと提案して」とか「他にバリエーションを出して」などと、全く同じ意味で使っていることもあります。
わたし個人は、バリエーションは「案」の子供みたいなものだと考えています。
話が少しそれましたが、元に戻します。
●写真を使った案のバリエーション
・別の写真を使う
写真を変えていくということは、バリエーションは無数にあるということです。
アイデアが無くて困るというよりも、多すぎて絞れなくて困る方が多いかもしれません。
何か「この写真を選んだ」という根拠があれば絞れてくると思います。
「この写真を選んだ根拠」が一つの切り口であり、アイデアとなってきます。
・また、同じ写真を使うにしても、レイアウトや写真の数など、造形的な扱いを変えることによってもバリエーションをつくることができます。
以下の図はそのバリエーションの一部です。
これも無数にあるといってもいいでしょう。
自分なりにバリエーションを持つようにしていくと、アイデアを出す引き出しが増えていくと思います。
●イラストを使った案のバリエーション
イラストも、上述の写真と同じように、レイアウトやトリミングを変えることで、バリエーションを作り出すことができます。
また、別のイラストを使っていけば、バリエーションは無限であることも同じです。
ところで、写真は、誰がどのように撮影しても「リアルな絵」になります。
もちろん、ライティングや露出やアングルなど、同じモチーフでも全く同じように撮影できるものではありません。
でも、イメージを作成するためのひとつの表現手段として考えた場合、写真は「まるで本物そっくりな絵」というようなスタイルになります。(もちろん、写真には写真ならではのスタイルがあるのですが…)
一方イラストは、もっとさまざまな「スタイル」を使うことができます。
イラストは「スタイルを変える」という方向性でのバリエーションを作りやすい表現手段です。
色々なスタイルを組み合わせたりして、もっと面白いビジュアルのバリエーションは、無限に作っていくことができます。
また、同じ「ペンで描く」というスタイルを使っても、イラストは描く人によって全く違ったものが出来上がってきたりします。個性が出やすい表現手段です。イラストの面白いところでもあります。
また、イラストは、写真に比べて、「シーン設定をしやすい」という面があります。
写真は、シャッターを押すのは一瞬ですが、ロケーションや、スタイリング、ライティングなど、「必要なシーン」を設定するのがとても大変です。
でも、イラストは人間の想像力だけで、とんでもないシーン設定をしてビジュアルをつくることができます。
簡単とはいいませんが、「月でウサギが餅をついているシーン」というのは、一枚の写真に撮影するのは不可能ですが、(画像合成すれば何かできるかも知れませんが…)イラストでは描けてしまいます。
アイデア次第で、面白いシーン設定をしていくことで、また別のバリエーションが出来てくるかも知れません。
●平面構成を使った案のバリエーション
平面構成も、上述の写真と同じように、レイアウトやトリミングを変えることで、バリエーションを作り出すことができます。
平面構成は、与えられたスペースで、色、形、テクスチュアをバランスよく配置していくというものです。
まず、「形をつくる」ところから入っていくとやりやすいと思います。
平面構成は、素材集などから、アブストラクトな画像を配置するというだけでもできるものです。
良いのが見つかれば、それが一番簡単です。
さらに、そこに自分なりの構成要素を追加することで、オリジナルなものが生まれてくることと思います。
このように、バリエーションは、いくらでも無限に出していくことができるものです。
平面構成の「画面を分割して形をつくる」ということや、イラストの「線画」など、誰がやっても同じになるというものではありません。
作る人次第で、いくらでも工夫ができ、個性も出てくるものではないかと思います。
造形的なアイデアの、ちょっとしたヒントになれば幸いです。