「グラフィックデザインにオリジナリティは必要か?」というテーマで書きたいと思います。
この問いに対する自分なりの答えを言うと、
「オリジナリティは、出そうとするものではなく、出てしまうもの」
ではないかと個人的には思います。
特に初心の人で「オリジナリティを出さなくては」と頑張ると、ひたすら妙な方向にズレていきがちなので、むしろあえてオリジナリティについては考えるのをやめて、それよりも「型」を学んだり身につけた方がいいとわたしは思っています。
自分よりも上手い人や良いデザインをどんどんマネしたり、造形について知識を身につけたりということを、まず先にやるべきです。
作品や仕事として表に出すわけにはいきませんが、「模写」(レイアウト模写)というのもとても勉強になります。
それで、オリジナリティについてですが、いくら頑張ってマネをしても、どうしてもオリジナリティは出て来てしまうので、出そうと出そうと頑張らなくても良いのです。
オリジナリティは筆跡のようなものです。
デザインを学んでいくのは、書道を学ぶのに似ていると思います。
わたしは書道をならったことはなくて、学校でやった習字だけですが、
何かで書道を習うことについて書かれたものを読みました。
個性を殺すくらいに最初はひたすらマネをするのだというのです。
想像してみればわかる通り、どれだけ個性(=オリジナリティ)を殺しても「筆跡」って、みんな違いますよね?
でも、それでいて、習えば習うほど、上手くなっていきます。
何かを習う前のオリジナリティは、玉石混淆(ぎょくせきこんこう)状態なのではないかと思うのです。
これは、良いオリジナリティも、悪いオリジナリティも要り混ざっている、ダイヤの原石みたいなものだと思います。
それを、習ってマネて自分自身を殺していくと、悪いオリジナリティは影をひそめ、良いオリジナリティが残っていくのではないかと思います。
わたしが一体自分がどれだけのことを身につけられたかはわかりませんが、今はオリジナリティなんて考えもしません。
「どうやったら読みやすいか」「どうやったら効果的か」「どうやったら伝わるか」「どうやったら良くなるか」というようなことだけです。
それでも、どういうわけだか、自分の作ったものは「いかにも自分が作ったような感じ」というのになっていて、気恥ずかしくなってしまったりもします。
また、いつも一緒に仕事をしている人たちの作ったものも、だいたい「誰が作ったか」すぐにわかってしまうものです。
得意や不得意な分野も見えてきます。良く出れば「スタイルがある」というような感じにもなってきます。
だから安心してオリジナリティは完全に殺してしまうくらいが丁度いいのではないでしょうか?
●オリジナリティについて誤解のないように…
デザイナー個人のオリジナリティの必要性は低いですが、クライアントに提案するアイデアはオリジナルである必要があります。
何かの丸パクリなんていうものはもちろんだめです。
盗作になってしまいます。
または誰かの著作権を侵してしまっているというか…。
ですが、一方で、「1から10まで完全なオリジナル」というのも難しいというか、不可能な話でもあります。
デザインは視覚言語であるので、共通性も大事です。
完全なオリジナルというのは、他人に何も伝わらない可能性さえあります。
そして、何かを参考にするというのも、仕事の現場ではよくやることです。
「こんな感じでデザインして欲しい」といって、クライアントから参考資料として雑誌が渡されることもあります。
真似したり参考にすることと盗作や著作権侵害の明暗をわけるところは、
「自分なりの一工夫」
「造形的な考え方だけ取り入れる」
「切り口を変える」
というのがポイントだと思います。