グラフィックデザインの仕事で、「デザインを提案してください」というのがあります。
そして、それはたいてい「3案」ということになっていますが、何故でしょうか?
今日は、その理由について書いてみたいと思います。
●人は「選びたい」から
これが、1案でなく、複数案出す一番の理由です。
使うのは1案だけなのです、最終的には。
でも、お客さんは殆どの場合、1案では満足しません。
幾つかの中で選ぶと満足できるのです。
だから、使うのは1案だけだけれど、没になるとわかっていても他の2案は必要なのです。
だから、3案をワンセットで一つの作品だと思ってあきらめてやるしかないと思います。
●2案よりも3案。4案よりも3案
個人的には、4案よりは2案の方がマシだと感じています。
4案以上になってくると、逆に
「選べない」
「どれがいいかわからなくなった」
「これが良いような気がするけど、もう一度この路線で3案出して」
「検討してみます…」といって別の人に相談したり長期間放置
「もういい、お腹いっぱい、これ以上見たくない」
というようなことが発生してきがちです。
2案だけだと二者択一「どっちか」という感じでまだ不足感があります。
●1案の方が良いケースもある
お客さんが求めていないときは、1案の方が良いことがあります。
「ピッタリのものを作ってほしい」と思っているとき、
「最善の1案」という見せ方の方が良いです。
逆に、作っていると、「こっちもいいんじゃないか」みたいに複数できあがってしまうことがあります。
そんなときは、やっぱり1案に絞ります。
次善策としては、「オススメの1案」と他のように、差をつけて出すということです。
下手にたくさん見せると迷いを誘発するだけだったりします。
●たくさん出すケース
「あらゆるケースを網羅して、全部検証しましたよ」ということを知らせるために、その証拠として数多くの案を見せることがあります。
例えばロゴのデザインは、20や30案は出します(50案とかもっとという話もききます。わたしは経験がありませんが…)。
それから、絵本の本文書体を決めるときも、手持ちのフォントを全部検証して、見せたことがあります。
それにしても「中でもオススメはこれ」というのを決めておいた方が決定しやすいと思います。
話を元に戻します。
「人間はいくつかの候補の中から選んで決めたい生き物である」というのが、なぜ3案か?ということの答えです。
そして、その「いくつか」というのが「3つ」なのです。